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2019年5月7日 図書館通信 <らいぶらりーNEWS立夏号 + 五月注目の新刊> 発行

完全無欠を突き崩せ「倒叙ミステリー」の世界

最初に犯人が明かされ、用意周到な計画的犯行が行われる。しかし完璧だと思われた犯行はふとした矛盾と綻びを見逃さない者によって気付かれ追い詰められる。勘と思考と行動により暴かれ、裏付けられ、裁かれる。完全が覆されるカタルシス、倒叙ミステリーの世界。
「皇帝と拳銃と」(913-ク)倉知淳著 東京創元社
 社会的地位を守るため行われた完璧な犯罪計画、しかしどんな立場にあろうと道にもとる行いには必ずどこかに綻びが生じ、その男は決してそれを見逃さない。犯罪者にとっての「死神」が扉を叩くとき、鉄壁のアリバイと共に罪を刈り取りに来る。倒叙の新探偵誕生。
 
「福家警部補シリーズ」(B913-オ―1~3) 大倉崇裕著 創元推理文庫
 風貌はさえず、刑事にすら見られない。しかし一度彼女に睨まれたら、どんなに巧妙な犯罪であっても露見し見抜かれる。意表を突き矛盾を突き心理を突く。その女、犯罪者にとってもっとも出会いたくない相手。完全を突き崩す、倒叙ミステリーシリーズ。
 
「倒叙の四季」(B913-フ) 深水黎一郎著 講談社文庫
「完全犯罪完全指南」とされるマニュアルを手にした者たちが自らの身勝手な思いから完全犯罪をもくろむ。しかし“完全”な“犯罪”などありえない、不審な事件に残された小さな綻びは物的証拠となり、その落とし前をつけさせる。四季それぞれに起きた事件が一巡りした後に明かされる驚愕の真実、連作倒叙ミステリー。
 
「容疑者xの献身」(B913-ヒ-3)  東野圭吾著 文春文庫
 世間に埋もれて生きる一人の天才数学者が起こした一件の殺人。明晰な頭脳を用いた完全犯罪は一つの思いに寄った、たった一度の“献身”だった。かつてその才を認めたもう一人の天才、物理学者湯川がその事件の真相を追う。天才同士の対決の果てが待つものとは? 儚く切ないミステリー。
 

考えること、感じること

「発想力を鍛える33の思考実験」(116-キ) 北村良子著 彩図社
 ある想定を頭の中で考え、答えを導き出す「思考実験」。頭の中だからどんなありえない想定もでき、様々な思考や発想を生み出せる。凝り固まった価値観から一歩踏み出し思考の幅を広げてみよう。有名な思考実験の命題を中心に、脳のシワをヨコに伸ばす発想力トレーニング。タテに論理的思考力を鍛える姉妹編「論理的思考力を鍛える33の思考実験」もあわせて。
 
「ほの暗い永久から出でて」(914-ウ)上橋菜穂子・津田篤太郎著 文藝春秋
 生き物は/人間は、こんなにも複雑に生きようと手を尽くし、命を紡ごうとするのに「死」は逃れられない運命としてそこにある。少しでも納得を得ようと、言葉を交わし思考を投げかけ、生と死をめぐる対話は続く。答えにはほど遠いかもしれないけれど、人生には意味があると言える。作家と医者が交換し交感した魂の往復書簡。
 

はびこる《フェイク》に踊らされないために

「フェイクニュースを科学する」(361-サ) 笹原和俊著 化学同人
 デマや噂、虚偽の情報があとを絶たずに拡散し人々の行動に強く影響を与える昨今。そんな状況を「情報生態系」の問題として捉え、その構造と仕組みに迫る。ぼんやりとした不安が蔓延しタコツボ化する情報化社会を科学的に分析していく。

「本質をつかむ聞く力」(N361―マ) 松原耕二著    ちくまプリマ-新書
 あらゆる意見・考えを手軽に素早く知れるようになったのに、どうも玉石混淆・真偽不明の情報ばかりが飛び交っている。本当や本質を見間違わないために意識しておくべきこととは? もっともらしく聞こえることこそ疑おう、情報を見極める力を養うためのヒント。
 
「わかりやすさの罠」(N002-イ) 池上彰著 集英社新書
 わかりやすい解説に定評のある解説者が「わかりやすい」ということに警鐘を鳴らす。「一言で言うと」や「知られざる真実」に潜む罠、「わかりやすい=知った」ではない。手軽さに惑わされない知り方・考え方を鍛えるためには?
 
「戦後最大の偽書事件『東日流外三郡誌』」(B212-サ) 斎藤光政著 集英社文庫
 ある家の天井裏から見つかった古代史が書き換わる〈古文書〉に学者やその土地の人々は沸いた。あまりに都合の良い発見に真贋を怪しむ人もいる中、“新たに”発見され続ける文書を巡り、激しい論争が巻き起こる。それは戦後最大の偽書事件。かつて多くの人が踊ったフェイクニュースが現代に投げかけるものとは。

そのほかもっと深めるために
・情報の濁流を乗りこなすには?
  「その情報はどこから?」(N007-イ)猪谷千春著 ちくまプリマ―新書
・デマ・流言を考える古典的名著
  「流言蜚語」(B361―シ)清水幾太郎著 ちくま文庫
・偽史を教材に道徳は説けるのか?
  「江戸しぐさの正体」(N385―ハ)原田実著 星海社新書
・忖度・誇張・隠蔽・虚報が導いた破滅
  「大本営発表」(N210.7―ツ)辻田真佐憲著 幻冬舎新書

今月の名言
「人間は知ることが大切だ。知ることを妨げるものはなにもないのだ。」(中野実 日 劇作家)

5月注目の新刊

塩谷歩波「銭湯図解」
住野よる「麦本三歩の好きなもの」
上橋菜穂子「鹿の王 水底の橋」
神奈川大学広報委員会編「17音の青春2019」
NHK監修「ブラタモリ17・18」
国分良成監修「図解はじめて学ぶみんなの政治」
月村了衛「東京輪舞」
ドナルド・キーン「ドナルド・キーン自伝」
桂歌丸「歌丸ばなし」
木庭顕「誰のために法は生まれた」


新刊!!
続々入荷中!