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2021年1月27日 図書館通信 図書館ニュース冬号 発行

※図書館ニュースは現在図書室内で配布しています。

~既存をはみ出し、飛び出て、踏み出せ~
多種多様多層世界見聞

世界の裏側、のぞいてみない?

「澁澤龍彦玉手匣(エクラン)」(914―シ)澁澤龍彦著 河出書房新社
「澁澤龍彦ドラコニア・ワールド」(N910―シ)澁澤龍彦著 集英社新書
「ドラコニアの夢」(B914―シ)澁澤龍彦著 角川文庫
 そこはその人が創りあげた唯一無二の固有世界。古往今来・天地四方・現実空想と、様々な時代、場所、世界からこの世の裏側に秘されたものを集め並べた迷宮であり楽園でもある異端の理想郷。異境の間を越えた先を、彼のエッセンスが凝縮された小文とそのコレクションで堪能する。今開かれる文学界の黒魔術師の扉、ようこそ、龍彦の国〈ドラコニア〉へ。

この世の果てまで、何マイル?

「南極で心臓の音は聞こえるか」(N402―ヤ)山田恭平著 光文社新書
 「南極では自分の心臓の音が聞こえるらしい」という学生の時に聞いた話に憧れ、いつかそれを確かめたいと思っていた。そして研究者となったのも束の間あれよあれよともう南極に行けることに、ただし長い越冬隊の方で。非日常が日常の、想像を絶する極地の自然での暮らし。宇宙よりも遠いとされる場所で過ごした1年4カ月を面白おかしく赤裸々に語る。

はじめての文明再興も、なんか行ける気がする!

「ゼロからつくる科学文明」(404―ノ)ライアン・ノース著 早川書房
 もしタイムマシンで過去から帰れなくなってもあきらめないで!取り残された時代でも文化的文明人としての生活を取り戻すための方法をゼロからレクチャーします。あなたはここでなら人類が今まで培ってきた叡智を誰はばかることなく使うことができる、そうだあなたはこの時代の王様にだってなれる! この1冊で人類数万年の文明を、チートにショートカットできる(かもしれない)時間旅行者のためのサバイブ・ガイド。

未来をつくるのは、好奇心だ!

「『役に立たない』科学が役に立つ」(404―フ)エイブラハム・フレクスナ―/ロベルト・ダイクラーフ著 東京大学出版会
 有用性や利益性ばかりを求めていてはいつか世界は行き詰まる、今の世の中を支えている技術のほとんどは、かつて科学者が趣味と興味で探求してきたことから生み出されたものばかりだからだ。誰かの思い付きは明日役に立たなくても、百年後に必要となる時が来る。その原動力たる『好奇心と想像力』を科学が失わないために、『役に立たない』科学を提言する。

知らない世界を、つないでいく

「定本 酒呑童子の誕生」(B386―タ)高橋昌明著 岩波現代文庫
 京の人々を恐怖に陥れていた鬼を源頼光らが退治した酒呑童子説話。その来歴を紐解いていくと、かつて都を襲った疫病に端を発し、国内外の数々な伝説や信仰を組み合わせ作られた形跡が見つかっていく。それはその時代の人々が『物語』に求めたもの。繋がり組み合わさり生み出されていく過程が知的興奮を呼び起こす。日本でもっとも有名な鬼退治の真実。
 
「芸術人類学講義」(N701―ゲ)鶴岡真弓編 ちくま新書
 内も外も何もかもが分断されようとも最後に人を繋ぎとめるのは、『芸術』だ。かたちにならないものを感じ、現し、飾り、装い、人類は芸術に様々なものを託した。それぞれの裡に潜む根源への問い掛けが未来を照らすヒントとなる。いま『芸術人類』学を提議する。
 
「思い出の作家たち」(B910―キ)ドナルド・キーン著 新潮文庫
 谷崎・川端・三島・安部・司馬、著者が深く親交してきた日本を代表する作家たち。その人柄や人間観を回想し、彼らが時代と文学に込めたものを思い返す。時代を共にした人だから語れるその時代の文学界の空気。作家ガイドとしても最適な現代日本文学論。
 
「てくてく地獄さんぽガイド」(181―テ)田村正彦編 グラフィック社
 その場所は昔からほとんどの人が訪れてきた話題の映えスポット。でも中々行けないから分からないことも多い。そんな衆生のために待望のガイドブックが登場! 事前準備(現世の行い)で行く場所と体験(責め苦)をしっかり確認、リピーター(六道輪廻)にはお得なクーポンも付いて鬼に金棒! 人は古来から、現世でよりよくあるために己を強く戒め生きてきた。いつかの日のための地獄ガイド。
 
「夢十夜」(B726―コ) 近藤ようこ漫画 夏目漱石原作 岩波現代文庫
 「こんな夢を見た」で始まる、夏目漱石作品中最も幻想的で夢幻的な作品を漫画化。一つの夢のかたちとして提示された物語に、あなたが抱くの既視感?違和感? 虚像が見せるは実像の鏡像、日本幻想文学の傑作を漫画から触れる。
 ※あわせて原作「文鳥・夢十夜」(B913―ナ)の方も一緒に。

混迷の時代を、鋭く撃ち抜く物語

「泥の銃弾」(B913―ヨ―1・2)吉上亮著 新潮文庫
 難民受入れを進めた日本に響く一発の銃声。白昼の都知事狙撃事件はこの国の裏にくすぶる矛盾を一気にあぶりだした。隠蔽された事実を追う一人の記者、そして事件の鍵を握る謎の男、彼らはこの国が極点に達する前に真実にたどり着けるのか? 現代の問題を鋭く予見する一級のサスペンス小説。
 
「機龍警察」シリーズ(913―ツ―1~6)月村了衛著 早川書房
 国内犯罪の国際化・凶悪化・重武装化に対し、警視庁は様々な垣根を取り払い、新たな部署、特捜部を創設する。しかしその特殊性ゆえに、縄張り意識の強い警察の中では鬼子として睨まれ蔑まれていた。混迷を深める現代で、彼らはそれでも正義を問い、信じ、戦っていく。これはそのうち現実になるかもしれない、新・本格警察小説。

また、春に会いましょう

「春宵十話」(B914―オ)岡潔著 角川ソフィア文庫
 『人の中心は情緒である』と、日本を代表する大数学者、岡潔は日本人に説く。自然や美に心をひたし、知と識の間をたゆたえ思考し、調和を見出す。心を涵養することが教育であり、人が人間となる蘊奥にして基本がある。雌伏の先に春を待つ。思索と示唆に満ちた名エッセイ。

暗闇を照らす知の言葉、さらに岡潔に触れる
「紫の火花」(B914―オ) 朝日文庫
「岡潔 数学を志す人へ」(402―ス)スタンダードブックスシリーズ 平凡社
今月の名言
「人の中心は情緒である」
「情操が深まれば境地が進む」
「理想の高さが気品の高さになるのである」 (岡潔著「春宵十話」より)

知らないことを知ることで
人は自分の外を少しでも想像できる
書はそれを少し手助けするだけ
少しずつだけれども
止めなければ、進んでいる

あとは、これからは、あなたたち次第













そしてもう一つ
青い心を胸に
どこかの誰かのために、聞こえなくても、願いを込めて
世界の中心だろうが
世界の片隅だろうが、
誰もが誰かのために
ガンバレ、と言い続けよう

ひとに、やさしく あるように